同じSamsung Electronicsで、交渉の境界を巡り反対方向の要求が出た

2026年9月18日の聯合ニュースによると、家電・TV・スマートフォンなどDX部門中心の労組「同行」は、半導体DS部門と一緒に賃金交渉できる共同交渉の枠組みを求めた。

一方、Samsung Electronics最大労組でDS部門中心のSamsung Group超企業労組Samsung Electronics支部は、2027年賃金交渉で共同交渉団を構成しない方針を示している。8月にはDX側に別途交渉を申請すべきだという趣旨の公文も送った。

一方は『同じ会社だから一緒に』、もう一方は『異なる事業と組織だから分けて』という方向だ。Banseogが見るのは労組間対立そのものより、成果を共有する組織の境界がどこにあるのかという問いである。

一つの会社の中に異なる経済が存在する

Samsung Electronicsは一法人だが、DSとDXでは製品、投資サイクル、競争環境、損益構造が大きく異なる。

半導体市況が大きく動けばDSの収益性はDXとは異なる速度で変化し得る。そのとき報酬制度はSamsung Electronics全社、DS・DX部門、さらに個別事業部のどこを基準にするかを選ばなければならない。

どの線を選ぶかによって、同じSamsung Electronics社員でも報酬の大きさと変動性は変わり得る。

DS内部でも成果の境界はすでに分けられている

2026年の労使合意では、DS特別経営成果給の原資を労使が選定した事業成果の10.5%とし、支給率の上限を設けない仕組みが導入された。

その原資はDS部門共通40%、各事業部60%に分けられる。Newspimは、黒字事業部の成果をDS全体で一部共有しつつ事業部ごとの実績差も反映する構造と説明している。

つまりSamsung Electronics全体でDSとDXが分かれるだけでなく、DS内部でも共通組織とMemory、Foundry、System LSIなどの事業経済が報酬に入る。

論点は「いくら」より「誰と分けるか」に近い

DX中心の同行労組は全社成果の一定割合を共通原資にする案などを要求している。公開された要求だけを見ると、報酬の共通分母を会社全体へ広げる方向だ。

逆にDS中心労組が共同交渉団を構成しないとしたのは、交渉単位をより分ける方向と読める。ただし2027年の実際の交渉構造が最終確定したという意味ではない。

したがって争点は単なるボーナス額ではない。同じ会社で生まれた成果をどこまで共同成果と見るのかという境界の問題だ。

One Company → Multiple Internal Markets

Banseogはこの変化をOne Company → Multiple Internal Marketsと見る。

ここでいう市場とは、Samsung Electronicsの社員が法的に別会社へ雇用されているとか、法的に別々の労働市場が存在するという意味ではない。法人と雇用主は同じである。

注目するのは従業員が実際に感じる報酬、機会、成長性、異動選択の市場だ。事業ごとの収益性と人材希少性が大きく異なり、報酬制度がその差を直接反映するほど、一社内でも異なる内部市場のように機能し得る。

社内異動も単なる部署移動ではなくなる

同じ会社内で別事業部へ動くことは法的には社内異動だ。しかし事業部ごとの成長性、収益性、成果給構造が大きく異なれば、個人が経験する経済条件も変わる。

キャリア選択は『何を学ぶか』だけでは終わらない。どの事業の成長と損益につながるかが、報酬と機会の重要な変数になる可能性がある。

そのため個人の経済を会社×職位×個人評価だけでなく、会社×部門×事業部×職種×個人という構造で見る必要が出てくる。

Employer Brandの下にBusiness-unit Talent Propositionが生まれる

採用ブランドは通常会社単位だ。しかし内部経済が大きく分かれると、候補者は会社名だけでは十分な情報を得られない。

どの部門・事業部か、その事業の成長と損益はどうか、成果給は何を基準に算定されるか、別事業部へ動いた場合に条件はどう変わるかが重要になる。

そのとき企業は外部競合とだけ人材を奪い合うのではなく、社内でも各事業部が人材を説得する必要が出てくる。

BANSEOG VIEW | 会社の境界より成果の境界を見る

DX中心の同行労組はDSとの共同交渉と全社成果の一定割合を共通原資にする案を求めている。DS中心労組は2027年に共同交渉団を構成しない方針を示した。

同時にDS特別成果給は部門共通40%と事業部別60%に分けられる。会社→部門→事業部へ下がるほど、成果共有の境界が引き直されている。

BanseogはこれをOne Company → Multiple Internal Marketsと見る。法的な会社境界と、従業員が実際に感じる報酬・機会の境界は必ずしも同じではない。

企業やキャリアを見るとき、『どの会社にいるか』と同じくらい『その会社の中でどの経済に属しているか』が重要になる可能性がある。

Banseog View — One Company → Multiple Internal Markets

Samsung Electronicsは一法人だが、DXとDSは賃金交渉の境界について異なる方向を要求している。

DS特別成果給も部門共通40%・事業部別60%に分かれ、成果共有単位は会社より細かくなっている。

事業ごとの経済性と報酬構造の差が大きいほど、一社の中でも従業員が感じる内部人材市場は複数に分かれ得る。

参照した主な資料

DX中心労組の共同交渉・共通原資要求、DS中心労組の2027年共同交渉団不参加方針、DS特別成果給の40%・60%配分は公開報道で確認できる。ただし2027年の交渉構造は最終確定しておらず、Samsung Electronics内部が法的に別々の労働市場へ分離したという意味でもない。One Company → Multiple Internal MarketsとLegal Company ≠ Compensation Marketは公開された交渉・報酬構造に基づくBanseogの分析。