「人が足りない」と「自分の給料が上がらない」は矛盾なのか

企業は人材を採用しにくいと言い、統計にも人手不足が表れています。それでも個人の賃金交渉や転職オファーでは、期待するほど価格が上がらないことがあります。一見すると矛盾しているように見えます。

しかし、人手不足とすべての労働者の賃上げは同じ現象ではありません。採用は、職種、経験、スキル、資格、勤務地、働き方、そして企業が払う価格が同時に合って初めて成立します。

韓国では46.7万人が不足していても、企業はまず採用方法を変えた

韓国雇用労働部の2026年上半期職種別事業体労働力調査では、2026年4月1日時点の不足人員は46.7万人でした。一方、人手不足を解消するための取り組みでは「採用費用の増額または求人方法の多様化」が68.4%、「賃金引き上げなど労働条件の改善」は28.6%でした。

企業が人を採れないと感じた瞬間に、必ず基本給を大きく上げるわけではありません。採用チャネルを増やす、紹介会社を使う、探索範囲を広げる、要件を調整する。賃金は複数の調整手段の一つです。

採れない理由も「人がいない」より「条件に合う人がいない」に近い

同じ調査で、2026年第1四半期の未充足理由として最も多かったのは「企業が求める経験を持つ応募者がいない」25.8%、次いで「求める学歴・資格を持つ応募者がいない」18.5%でした。未充足は単純な人口不足だけでなく、企業側の要件と候補者市場のミスマッチを含みます。

そのため、同じ人手不足業界でも、すべての職種が同じ希少性を持つわけではありません。特定設備の経験、顧客対応、品質・規制責任など、代替しにくい条件に不足が集中すれば、その役割の価格は上がりやすくなります。

人手不足が賃金に変わるのは「空席のコスト」が高くなったとき

企業が欠員を長く抱えても耐えられるなら、すぐに賃金を上げる理由は弱くなります。他部署で仕事を分担する、採用期間を延ばす、要件を下げる、外注や自動化で補うこともできます。この場合、人手不足は存在しても賃金プレミアムには直結しません。

逆に、その人がいないことで生産が止まり、プロジェクトが遅れ、顧客や品質・安全に損失が出るなら計算は変わります。代替候補も少なければ、「さらに探すコスト」より「より高く払うコスト」の方が安くなる瞬間が来ます。

日本は、人手不足が賃金上昇につながり得る反例でもある

「人手不足でも賃金は上がらない」と一般化するのも正しくありません。連合の2026年春闘最終集計では、賃上げ率は全体で5.01%、300人未満の中小組合で4.69%でした。日本銀行も2026年の労働市場が歴史的に見て引き締まった状態にあると評価しています。

ただし、春闘の数字は労働組合の交渉集計であり、日本のすべての労働者の実際の賃金上昇率と同じではありません。物価、最低賃金、企業収益、労使慣行も作用します。それでも、強い労働需給が企業の賃金設定行動に影響し得ることは確認できます。

企業は「候補者がいない」と「市場価格より安く買おうとしている」を分ける必要がある

採用が長期化すると、企業は「候補者がいない」と説明しがちです。しかし実際には、市場に人が少ない、要件が狭すぎる、勤務地や役職に魅力がない、提示報酬が市場価格に届いていない、といった原因が混在します。

これを分けずに同じ求人を長く出し続けても、採用コストだけが増えます。Searchで重要なのは候補者名を増やすことだけではなく、どの条件を変えれば候補者プールが広がるのか、どの人材は価格を変えなければ動かないのかを把握することです。

個人にとって重要なのは「人手不足業界か」ではなく「自分を代替しにくいか」

「自分の業界は人手不足だから年収も上がるはずだ」と考えるのは危険です。業界平均の不足感より、自分の役割がどんな問題を解決し、代替候補がどれだけいて、その役割の空白が会社にどんなコストを生むかの方が交渉力に直結します。

年数だけを積むより、希少性を説明できる証拠が重要になります。どの規模の問題を任されたか、どんな損失を減らしたか、どの顧客やシステムに責任を持ったか。市場価値は「長く働いた時間」より、「いないときに生じるコスト」を市場がどれだけ高く見るかに近づいています。

人手不足は「人の価格」ではなく「役割の価格」を問い直す

大きな人手不足の数字だけを見ると、すべての労働者の交渉力が同じように上がるように見えます。しかし採用市場は職種と条件ごとに分かれています。採用チャネルの拡大で終わる不足もあれば、最終的に報酬体系を変える不足もあります。

Banseog Searchはこの差を、単に「何人足りないか」ではなく「どの役割を、どの条件で採るのが難しいか」という問題として見ます。企業には採用要件と価格を見直すシグナルであり、個人には自分の経歴を年数ではなく、代替しにくい問題解決力として説明するシグナルです。

参照した主な資料

韓国の不足人員・未充足理由・企業対応は韓国雇用労働部の調査に基づきます。日本の春闘数値は組合交渉の集計であり、日本全体の平均賃金上昇率として一般化していません。「役割の価格」と人手不足が賃金に転化する条件は、複数資料をつないだBanseog HR Intelligenceの分析です。